2010年01月31日

宿主を性転換させる寄生バクテリア

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100127002&expand

 急速にその数を増やしている寄生バクテリアがいる。このバクテリアは、宿主を性転換させて単為生殖化を引き起こすだけでなく、宿主を“気味の悪い怪物”に変身させてしまう。このような大惨事ともいえる生殖異常を引き起こす仕組みが最新の研究で解明された。その方法とは、免疫系を停止させることだという。

宿主を性転換させる寄生バクテリア.jpg


 キョウソヤドリコバチをはじめとする寄生ハチ3種のゲノムを初めて解読した研究者チームによると、バクテリアの一種であるボルバキアはハチの遺伝子を操作し、バクテリアの侵入に対して警報を発するタンパク質を抑え込んでしまうという。その結果、バクテリアに対する防御機構が機能せず、ボルバキアは悪事を働くことができる。

 この仕組みは、ボルバキアが宿主とするダニやクモ、線虫などの昆虫への感染でも使われている可能性がある。これらの生物すべてにおいて、宿主の生殖システムが改造される現象が起きているのだ。その結果は実に奇妙で、明らかにオスを不要とする生殖戦略が取られている。

 ボルバキアに感染したオスは、生殖能力のあるメスに性転換するか命を奪われる。メスの場合はオスを必要とせず、単独で子を作らせる。また感染したオスの精子は、非感染のメスと交配しても正常に受精できず子孫を残せない。

 オスがこれほどひどい仕打ちを受けるのは、ボルバキアは最小限の細胞質しかない精子に潜り込めないためだ。卵子に感染したメスのみがボルバキアを子孫に伝えることができる。

「人間の世界ではSFかもしれないが、昆虫の世界では正真正銘の現実だ」と、アメリカ、テネシー州のヴァンダービルト大学で生物学の教授を務めるセス・ボーデンスタイン氏は話す。同氏は今回の研究を行った国際コンソーシアムの一員である。

 ボーデンスタイン氏が“性の操り人形師”と呼ぶボルバキアは、フランケンシュタイン張りの改造を宿主に行うことで、ほかの寄生生物より優位に立っている。宿主を殺すことなく繁殖できるため、宿主の繁殖とともに宿主の子孫へと広がっていくチャンスが大きいのだ。

 事実、ボルバキアの生存戦略があまりに優れているため、“動物界でも特に成功を収めている寄生生物”と称される。ボーデンスタイン氏によると、クモやダニが属する節足動物の約70%に感染しているという。「腐った果物などに留まるハエはどこにでもいるが、ボルバキアが感染している可能性が高い」。

 ただし、ボルバキアの仕事は常に正確なわけではない。時には中途半端に終わり、半分オスで半分メスという“気味の悪い怪物”を作り出すことがあるという。

 ボルバキアが遺伝子に破壊行為を仕掛ける正確な方法はわかっていない。ただし、ボルバキアが単に感染するだけではなく、宿主のゲノムに自身の遺伝子の一部を移しているのは確かだ。

 具体的なプロセスははっきりしていないが、ボルバキアは宿主の生殖システムに感染することで、自身の遺伝子が宿主の遺伝子に吸収される可能性を高めているとボーデンスタイン氏は考えている。

 ボルバキアが宿主の間で広がっていく仕組みの中でも、特に宿主の子孫への伝播方法がわかれば、昆虫によって媒介されるマラリアやデング熱などの感染症の拡大を抑制できるかもしれないとボーデンスタイン氏は期待を寄せている。

 例えば、蚊に遺伝子を挿入し、マラリアの原因となるバクテリアへの耐性を持たせる方法は既にわかっている。ただし、この遺伝子をすべての蚊に広げる効果的な方法は見つかっていない。

 このような遺伝子をボルバキアのゲノムに組み込むことができれば、ボルバキアが“自動機械”の役割を果たし、蚊から蚊へと遺伝子が伝わるかもしれない。ボーデンスタイン氏は将来的な用途に期待しつつ、「基礎科学の見地からも非常に興味深い。バクテリアのように単純な生物が複雑な宿主の性や生殖を操作できるなんて」と今回の研究成果を喜んでいる。

 この研究成果は「Science」誌の1月15日号に掲載されている。

Photograph courtesy Merijn Salverda and Richard Stouthamer via NSF

(National Geographic News January 27, 2010)





(´-`).。oO(関連ニュース・・・)


雌だけで生殖 誘因菌解明
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201001260002.html

 近畿中国四国農業研究センター(福山市)と広島大、米国・カリフォルニア大の共同研究チームは、昆虫に感染させると雌の単為生殖を引き起こすバクテリアの存在を突き止めた。寄生菌リケッチアの一種で、農作物害虫の天敵を効率的に増やす実用化に向け、研究を進めている。

ハモグリミドリヒメコバチ.jpg


 センターの三浦一芸主任研究員(50)を中心とするチームが、ハモグリミドリヒメコバチの研究で解明した。この雌バチがリケッチアに感染すると、交尾をしなくても、自分と同じ遺伝情報を持つクローンである雌の卵を産めるようになる。

 単為生殖するハチが発生する仕組みはこれまで判明していなかったが、共同研究チームが抗生物質などを使って明らかにした。英国王立協会紀要に成果を発表した。

 ハモグリミドリヒメコバチは体長1〜2ミリで施設栽培のトマトやナスの害虫ハモグリバエの幼虫に卵を産みつける天敵。リケッチアに感染させて雌だけを増やせれば、ハエを効率的に防除できると期待される。

【写真説明】ハモグリミドリヒメコバチ

('10/1/26 中国新聞)




(´-`).。oO(トランスジェンダーバクテリアかあ・・・)
ラベル:生物農薬 交尾
posted by まろんど at 10:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 虫全般・研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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